患者さんに言われることがあります。
「先生、抗生物質を出してください」
希望される理由はなんですか?
「早く良くなるように感じるんです。仕事も休めないし…」
はてさて、本当に【抗生物質】が【効いてる】のでしょうか?
プラセボ効果という言葉、知ってますか?
プラセボとは、偽薬のこと。
偽薬を本物だと信じたために
症状が改善することを、こう呼びます。
不思議ですよね。
咳はあるけどレントゲンに影のない患者さんたちを
2つのグループに分け、
片方には抗生物質を、
もう一方には偽薬を飲ませるという実験が
かつて、ありました。
その結果、治り方には全く差がなかった、という
報告がされています。
先日買ってきた『週刊ダイヤモンド・人気医療の罠』という雑誌にもありました。
薬の色や形や価格、渡す医者の服装、
パッケージに製薬会社の有名ブランドか書いてあるか…。
こんな要因でもプラセボ効果に差が出ることが様々な研究でわかっているんです。
また、ドイツの大学病院で実施した実験例が出ていました。
偽薬のクリームを『痛み止め』と称して腕に塗り、電気ショックを与えると、
痛みが和らいだ、というのです。
このとき脳内ではモルヒネによる鎮痛作用と同じような反応があったそうです。
そこで、モルヒネの効果を消す注射をし、再度、同じことをしたところ、
プラセボ効果は消えてしまったそうです。
実は風邪症候群と診断された人たちの中で、
本当にどうしても抗生物質が必要だというケースは1割程度なんです。
残りの9割は、抗生物質は飲まなくてもよい、ということ。
飲まなくてもよいものを、無理に飲む必要はないと思いませんか?
それなのに、「早く治るから…」という思い込みから、抗生物質を希望する。
抗生物質は、細菌に対して効果を発揮するものであり、
風邪などのウイルスに対しては効き目がないことを、
心の片隅にとどめておいてください。
からだ、心、そして薬。なかなか複雑な三角関係です。